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事業収支計算プログラム

現在事業収支計算プログラムの第4版を作製しています。

事業収支計算というのは、
事業を進めるにあたってその事業の採算性を検討するものです。

今回は、事業収支計算とはどのようなものか簡単にご説明いたします。
もしよろしければ後学のためにお読みください。

 

最初に事業=たとえば貸ビル事業を開業するにあたって必要な総[事業費]を算出し、
それに見合った[事業資金]を確保します。

[事業資金]には手持ちの自己資金、敷金、保証金あるいは市中銀行の借入等があります。
このうち返済が必要な資金については、10年なり20年なりで返済していかなければなりませんが、
その原資は、貸ビル開業後の毎年の利益をあてることになります。

利益を計算する前に、まず毎年の収入(これを[営業収入]といいます。)を確保しなくてはいけません。

例えば、毎年つぎのような営業収入があります。

家賃、駐車場収入等

一方、支出としては、建物の管理費、修繕費、保険料等がありますが、これらを[営業支出]といいます。

ところで、建物は建設の時点から毎年古くなります。
この価値の減価を補償する目的で減価分を支出の一部と考えていいと法律で定められています。
これを[減価償却]といいます。 
減価償却費は実際には、お金として出ていくわけではありませんが、
税務上は支出(損金)と認められているものです。

営業収入から、営業支出と減価償却費を引いた額が、営業利益になります。

営業利益 = 営業収入 - 営業支出 - 減価償却費

このほかに、借入金の支払利息、逆に預金があれば受取利息があります。

これを[営業外損益]といいます。営業利益から営業外損益を引いた額を[経常利益]といいます。

経常利益 = 営業利益 - 営業外損益

この経常利益 が税金の対象となります。
法人税(個人の場合は所得税)、住民税および事業税の計算をします。

税引後利益 = 経常利益  - 税金

ところで、減価償却費は実際にはお金が出て行くわけではありませんので、
この分は自由に使うことができます。

ケースによっては、工事に支払った消費税は、
申請すれば事業開始初年度に還付され、
税金計算とは関係なく使用することができます。

建設工事は高額だし、還付消費税も大きな金額ですが、
住居系には認められていません。

これらのすべてを足したお金は、当期資金残([当期キャッシュ]といいます)を、
借入金の返済に充てることが出来ます。

当期キャッシュ = 税引後利益 + 減価償却費 (+ 還付消費税)

通常、開業時点では、赤字がしばらく続きますが、
数年後には収支が黒字に転換し、さらに累積赤字も解消されます。

貸ビル事業では、借入れ金額が大きいため、利益のほとんどを借入金の返済に充てる必要があります。
このようにして、例えば、20年後にすべての借入金を完済し、初期投資資金を回収する事になります。

このようなしくみのもとで、家賃等が幾らのとき、何年後に資金回収の状態がどのようになっているか、
また、ある年数で全投資資金を回収するには、家賃等を幾らにすれば良いかを調べるのが、
事業収支計算ソフトの主な仕事です。

事業収支計算に関連する項目を次にあげておきます。

事業費:

土地取得費、解体整地費、建築工事費、開業費
工事期間中金利、不動産取得・登録税、事業所税
抵当権登録税、設計料、コンサルタント料

事業資金:

自己資金、敷金、保証金、建設協力金
長期借入金、短期借入金

営業収入:

家賃、駐車場収入

営業支出:

地代、管理費、火災保険料、修繕費
人件費、雑費
固定資産税、都市計画税

減価償却:

建物、設備、開業費

税金、その他:

法人税、事業税、個人所得税、住民税、
その他(別事業収入等)

日本という国

日本社会には色々な矛盾があります。

農業は非効率で、
米の輸入には価格の何倍もの関税をかけています。

様々な業界で、政官財の癒着が取りざたされています。
農業も医療も建設も電力も。

これに対してグローバリズムの名のもとに、
ここ数年あらゆる分野で「規制緩和」の動きが続いています。

その結果多分、
農業、医療、建設、電力等々の業界での癒着は相当の薄らいだのだと思いますし、
規制が取り払われてみれば、力のあるものがどんどん強くなっていきます。

どの地方都市にいっても郊外には大型店が並び、
反対に零細な駅前商店街は軒並みシャッターを下して店じまいしています。

大型店同士の競争では大型店はますます大型になり、
大きさを梃に商品の価格を限界まで安くして客を集めます。

これらの店では安いものであれば国境を越え、
あらゆるところから品物を仕入れます。

タクシーは大幅に増え、従業員は生活がやっとという収入しか得られません。
バス会社も林立し、価格競争の結果として大事故を起こしました。

サラリーマンの給与は減少し、
それならまだしも、定職につけない若者が沢山輩出され、
多くの中高年は生活できなくて生活保護で税金を消費しています。

よくよくみると、会社が勝ったといっても、
ごく少数者の経営者が勝ったのであって、
その従業員は必ずしも優遇されているわけではありません。

貧富の差が増大しています。
日本の貧困率は世界先進30か国中ワースト5位以内だということです。
一人親の場合は、なんとワースト・ワンです。

これが「規制緩和」で私たちが勝ち取った成果でしょうか。

私は間違っていると思います。

強いものがどんどん強くなって、
「敗者にはセイフティネットを設ければいいのだ」という主張は欺瞞です。

勝者が勝ち取った戦利品を敗者に配分するなど、
ほんの一部の人だけの行動で、
大多数は勝てばますます貪欲に勝ちにいくのです。

数年前世界を震撼させたアメリカの金融資本が典型的な例です。

かつて日本は「一億総中流」といって揶揄された時代がありましたが、
民主主義の国では、社会は勝者だけ、敗者だけでは成り立ちません。
中流こそが社会を存続させているのです。

普通のおじさんやおばさんが、
細々と野菜や肉や惣菜を売って生活していたのです。

普通の生活はある意味無駄だらけです。
無駄を分け合って多くの人が人生を送っているのです。

勝者からすれば、「なんと無能な」と思うかも知れませんが、
勝った負けたなど、
「下天の内をくらぶれば、夢幻のごとくなり」です。

一生懸命やる人は一生懸命努力し、
「それなり」の富や名声を得、
それについていけなかった人は成功者に敬意を払い、
成功者もまた平凡に生きる人への思いやりがあれば、
それでいいのではないか。

しかし問題はそう単純ではありません。
かつて発展途上国といわれた国々は力をつけ、
今や、家電製品やコンピュータのメモリは韓国がトップシェアをとり、
中国も一部家電でも出荷台数トップの座を占めています。
安い賃金の国では安い製品を生産できませすから、
賃金の高い国は太刀打ちできません。
これからも多くの国が力をつけてきて、
日本の経済的優位は保持しにくくなっていくのでしょう。

どうすればいいかという決定的な解答はないかもしれません。

ただいえることは、
無知にまかせて負け組になるのではなく、
中流の人々が安心して生きていける国、
経済も、知的にも、安全保障も強い国をめざさなければいけないのだと思います。

それは「昔に返る」ではありません。
かつて競争相手もいない中で、「一億総中流」になったのとは訳が違います。

今は強い意志を持たなければ、
そのような状態にはならないと思います。

私たちは、
それぞれの持ち場でこれまで以上に努力し、
身近なこと、世界のことに関心を持ち、
批判精神をもって「これでいいのか」と問い、
事に当たっては、正義感をもって最善をつくす。

 

私にはそれ以上の方策はわかりません。
とりあえず誰でもできることだし。