「ダ・ヴィンチ・コード」

実は私は独り暮らしをしています。
妻は遠く九州の実家の病院に手伝いに行っていますし、
息子二人は近くで所帯を持っています。

入院が決まったのは29日のもう6時頃だったかもしれません。
次男は近くに住んでいるのですが、朝が早いので今からいろいろ頼むのは無理です。
長男がちょうど車で帰宅途中だったので、我が家に寄り必要なものを持ってきてもらいました。
妻は実家の病院で会計と給食を担当していますので、
月末月初は動きがとれずそれでも3日には、こちらに来てくれる手はずを採ってくれました。

治療は抗生物質を朝晩点滴し、ひたすら薬の効力に期待するだけです。

息子に衣類と一緒に買い置きしていた文庫本を持ってきてもらいました。
彼が私の書棚から見繕って持ってきたのは「ダ・ヴィンチ・コード」。
私が1年位前に買って本箱に放りこんでいたものです。
最初の方は確かに読んだ記憶があります。

ともかく読み始めました。
まず、驚いたのは著者の薀蓄のすごさです。
この話はキリスト教の根深い部分を題材にしています。
話は丸一昼夜の出来事です(多分)。
私も正味丸一昼夜程度で読み飛ばしましたので、細かい部分を理解していません。
間違っているかもしれません。次ぎのようなものです。

原始キリスト教では女性を尊重し、
キリスト自身も妻帯者であり、夫婦ともにそれなりの家系の出だった。
(女性の地位がキリスト教では大問題であり、この小説の重要なテーマである)。

下って1099年十字軍の指揮官がエルサレムに就き、
一族の持つ強大な秘密を後世に引き継ごうとシオン修道会を設立。
その秘密の中にソロモン王の秘宝の所在を記したものがあり、
事実であった(らしい)ことから秘密の信憑性が高まる。
シオン修道会はテンプル騎士団を組織し、秘密裏に本格的に財宝探しをさせる。
テンプル騎士団は成果をあげ強力な力を持つことになり、
ローマ教会さえも手に負えなくなる。

遂にローマ教皇クレメンス5世はフランス王の力を借り、
ヨーロッパ全土に極秘の命令書を発信。
テンプル騎士団を異端とし、「1307年10月13日をもって完全に殲滅せよ」
「あらゆる手段を使って、秘密の財宝を探し出せ」というものであった。
こうして同日をもって凄惨な血の粛清が決行された。
有名な13日の金曜日である。

ローマ教皇=バチカンはこれを機にキリスト教の再構築を計る。
それまで語り継がれた福音書の都合のいいもののみを聖書として取り入れ、
ほかは異端として弾圧していく。
イエス・キリストは血の通った人間の子ではなく「神の子」であり、
イエスに近づいてきた女マリアは妻ではなく娼婦であった。
数世紀にも亘って魔女狩りをし、女性の地位の格下げを行った。

しかしテンプル騎士団を完全には抹殺することはできなかったし、
シオン修道会は秘密結社としてその後も存続していた。
そしてかれらは、バチカンの数々の悪行の証拠を隠しもっているといわれていた。

実はシオン修道会の総長には、ダ・ヴィンチをはじめ多数の著名人が就任していた。
ダ・ヴィンチの最後の晩餐は、キリストと12人の弟子の絵として知られているが、
実はこの絵でキリストの右隣の人物は女性で、
これこそがキリストの妻マグダラのマリアだというのである
(著者が、もちろんダ・ヴィンチが、と著者が主張)。

シオン派が過去の歴史を公表するといううわさが流れる(過去なんども)。
公表されればキリスト教世界の根底を揺るがす大事件である。
証拠の隠し場所を守ろうとする一派とそれを暴き完全に抹殺しようとする一派との
緊迫した状況を迎えている(真実は分からないが)。

この状況のなかで、バチカンから「カルト」として追放されようとしている教団がある。
そしてこれを利用しようとする黒幕=導師が登場する。

ある日(の夜から)、
ハーバード大学宗教象徴学教授ラングトンと、フランス司法警察暗号解読官ソフィア・ヌヴーが、
一昼夜のドタバタ劇を演じる。

もちろんここで話しの展開を書くのはマナー違反だから書かないが、
わたしは、これは日本漫画の劇画かと思いました(劇画についてほとんど何も知らないのですが)。

これは面白いというのでしょうか。
登場人物はどれも怪しく、「そんなことあり?」ということ多々あり、
話がいいところになると必ず場面が切り替わり、
テレビの番組ではあるまいに、「馬鹿にしているの?」といらだちます。

昔読んだシドニー・シェルダンの「ゲームの達人」の方が面白かったように思います。
(8月2日病床にて)

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