吉川英治「親書太閤記」

吉川英治「親書太閤記」は紙の本では全11巻、私は無料のキンドル版で読みました。

話は秀吉(日吉)の誕生から50歳ころまで、
本能寺の変、清須会議を経て、信長配下の先輩や同輩武将を排除あるいは配下に置き、畿内・東海・北陸・紀州・四国を平定、途中巨大な大阪城を築城しますが、
三河(浜松)の家康やそれ以東、中国では安芸(広島)の毛利とそれ以西の支配は未完で話は終わります。

その後、秀吉は九州や東北を平定し益々増長する一方、
後継者にしていた甥の関白秀次と、長年茶の師匠であり政治の参謀であった利休を自殺に追いやり、刀狩り、太閤検地、身分制、キリスト教追放、朝鮮出兵等、暗く複雑な行動をする秀吉の後半生の約12年について語っていません。
いわば、イケイケどんどんの前半の物語といったところでしょうか。

昔の映画華やかりし時代には、秀吉の話は年中行事のようなもので、何度も映画化されていますので、ここでもいちいち書きません。ざっと、主要部分だけ書いていきます。

小説では、
天文5年(西暦1536年)、尾張の国熱田に秀吉が生まれますが、
同年大陸・明の景徳鎮で日本人の父と中国人の母の間に楊景福なる人物が生まれます。帰国し茶わんやの跡取りになるのですが、この人物は実在の人物かどうかもわからないし、最後まで付け足しのエピソードで終始しますので、何のために仰々しく最初の話題にしたのか分かりません。

さて、秀吉の父は農業の傍ら、戦いがあれば褒賞目当てに志願して戦場に出る生活ですが、戦闘で負傷し働けなくなり、母親は働けない夫をかかえ、苦労しながら姉と日吉を養っていきます。やがて、その父親が他界すると母は再婚しますが、悪ガキの日吉はこの継父とそりが合わず、母が持たせてくれた姉の婚礼のために貯めてお金を懐に、一人で生きていくために家をでます。
日吉は針売りをしたり、住み込みで手伝いをしたり、村々町々を転々としながら生きていきます。

母親は侍にならないでくれと願いますが、逆に秀吉は侍になろうと機会を狙い、信長の遠出からの帰りみち直接信長に家来にしてほしいと直談判します。秀吉18歳、信長20歳の時です。

これから秀吉は信長のもとで下級武士の仕事をするので、どんな仕事にも懸命に働いたという以外大した話はなく、この小説の数冊分は、秀吉の話というより、むしろ信長の話が続きます。

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