漱石を読む 2

「こころ」、「三四郎」に続いて「それから」と「門」を読みました。

「三四郎」、「それから」、「門」はまったく別の小説で、登場人物も別人ですが、三部作といわれ一続きのテーマを追っています。
男と女の関係で、いずれも男の視点からの描写です。

「三四郎」ではまったく受け身の大学生が、一人の女に好意を持つのですが何も行動せず、結局その女は知らない男と結婚します。

 

「それから」では、大学を卒業して30歳になっても仕事をしないでぶらぶらしている男・代助の話です。彼は自分の父と兄が日露戦争後の社会の変化に乗じて、「あくどい商売で財をなしている」と半分軽蔑しながらも、その実100%親の支援のもとに生活しています。

父親は「いい加減仕事を見つけ独立しろ」、「早く嫁を貰え」とそれ相応の娘とお見合いをさせますが、相変わらずのらりくらしとした返事をしています。

あるとき大阪の銀行に勤めていた古い友人平岡が、上司の尻ぬぐいをさせられ職を失って東京に戻ってきます。借金を抱えその日の生活にも困窮した末に、妻三千代が代助の許に金を借りにやってきます。

実は三千代は今は亡き友人の妹で、自分自身好意を持っていながら平岡に譲ったいきさつがあります。まもなく平岡は新聞記者の職をえますが、相変わらず貧乏でその上夫婦仲がよくないことを知ります。そして遂に代助は平岡に「三千代を譲ってくれ」と申し出ます。

平岡は承知しますが、絶交を宣言し、顛末を手紙にして代助の父親に送ります。代助は父の怒りを買い勘当されます。

この時になって、代助は軽蔑していた父や平岡の世界で生きていかなければいけないことを思い知り、職探しに家を飛び出します。

 

「門」は東京でひっそりと役人生活している、宗助とその妻御米の話です。

実は彼らには過去があります。宗助が京大の学生であったとき、病弱な安井という友人がいました。
ほどなく安井は結婚します。ところが宗助は友人の妻に惹かれ結局駆け落ちします。(このあたりの描写がすくなく詳細はよくわかりません)

友人から奪った妻が御米です。

過去への引け目から彼らはひっそりと隠れるように生活しています。

唯一借家の崖上に住む大家と懇意になり、時々往来するようになります。
家主には満州でいろいろな事業をしている山っ気の多い弟がいることを知ります。
その弟が近々くるので会ってみないかという誘いです。
そのとき弟の相棒の京大出の安井という人間も一緒だと聞かされます。

宗助は激しく動揺します。
そのことを御米にも話さず、休暇を取ってひとりで鎌倉の禅寺にこもり、
こころの整理をしようとしますが、何の解決策も得ないまま東京に舞い戻ります。

家主に家主の弟の動向を探りますと、「連れと一緒に満州に帰りました」とのこと。
少しの進展もなく、宗助はまたいつもの生活に戻ります。

 

今回読んだ4冊の中で、「門」が一番面白かったです。前回も書きましたが、「三四郎」はまったくかったるいし、「それから」も細々した日常の「写生」が多くうんざりしました。

「門」は漱石自身作家としてこなれてきたのだと思いますが、宗助夫婦の身を寄せ合う日常もよくわかりますし、読者を引き込む筋立て、話の展開を用意していると思います(一素人の評です)。

最終盤古い友人安田が現れ、「どうなるのだろう」と読み進めましたが、宗助が禅寺に逃げるというのがこの小説の欠点と言われているようです。たしかに唐突といえば唐突ですが、「そうでなければどのような結末があるのだろうか」と私には想像もできなく、何の解決もなく不安の中で生活を続けていく人間の悲しさは、それはそれで納得できる終焉だと思います。

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