ダレ「朝鮮事情」

私は本を大切に扱います。他人に貸すとか売るとか考えていませんが、再度読むとき汚いと嫌なのです。線を引いたり書き込みをするときも最小限で、あとで消せるように鉛筆で薄く書きます。

読みたい本で新本がないときは古本を探し、手頃のがあれば、古本を買います。アマゾンの評価で「良」であれば、さして気になる汚れはついていません。

そんな訳で私は基本的に図書館で本を借りないのですが、先にご紹介しましたケンペル「江戸参府旅行日記」やツュンペリー「江戸参府随行記」は、古本でも高価なので図書館で借りました。

しかし、予想通りどの本も汚くて、やむを得ずうんざりしながら読みました。

これらの本はマンガ本の類ではなく、それなりの教養人が読むのでしょうが、どうしてこんなに汚すのか。

書き込みがあったり、線を引いていたり、紅茶かなにかの染みがついていたり、「もっと気を付けて扱えよ」。

実は今回ご紹介する「朝鮮事情」も図書館で汚い本を借りて読んだのですが、その後古本オークションで手頃な価格で出ていましたので、中古本を買いました。かび臭いですが、中身は新品同様です。

その他マッケンジー「朝鮮の悲劇」、ハメル「朝鮮幽囚記」がオークションで手頃な価格で出ていましたので、購入しました。どれも李氏朝鮮時代に生きた人々が書いた、朝鮮の記述です。

これまで江戸時代の日本を外国人の視点で書いた本を読みましたので、今度は同時代の朝鮮の生身の記述を知りたいと思ったのです。

 

ダレ「朝鮮事情」(平凡社、東洋文庫、1979年)は、「朝鮮教会史」序論に相当する部分です。原著は1874年の出版です。

当時まったくと言っていいほど、ヨーロッパ人は朝鮮を知りませんでしたので、「朝鮮教会史」を書くにあたって、「朝鮮とはこんな国です」と紹介するために書いたものです。

フランス・パリ外邦伝教会は、1831年以来朝鮮での布教に乗り出します。当時鎖国を布いていた朝鮮は、断固として異教の侵入を拒み、キリスト教徒に対して多くの残虐な迫害をしています。

そんな中でもキリスト教伝道師は、命を賭して布教のため朝鮮に入っていきます。

この本は1866年にソウルで処刑された朝鮮教区ダヴリュイ主教が集めた資料を、ダリが整理・編集し1874年に出版したものです。

ダレ自身は朝鮮に行ったことがありません。

読んだ結論からいうと、やはり、自分の目や足で確かめたわけではないので、伝聞をまとめたという雰囲気はぬぐいきれず、説明が定型化し、一般化しているように思います。

結果として、
「そこまで?」
「本当かな?」
という話が散見されます。

例えば、朝鮮人は自分の家にお祝い事があると、近所の人はもとより、貧しい人や通りすがりの人にも食事のもてなしをする。といっていますが、「いつもそうなのかな」と半信半疑です。

 

朝鮮史の中で、秀吉の朝鮮侵攻の話がでてきます。秀吉が中国・明への侵攻の途中で朝鮮を攻めますが、秀吉が死亡したことで、日本は朝鮮から撤退したと次のようなことが書かれています。

豊臣家が滅亡したのち1615年、日本国の頭「徳川家康」は、最終的に朝鮮と平和条約を結んだ。その和平の条件は、朝鮮にとって非常に厳しく、しかも屈辱的なものであった。それによると、朝鮮は毎年30枚もの人間の皮を貢ぎ物として貢がなければならなかった。

家康が人の皮を要求したという話は、初めて聞いたことで、「本当かな?」と思います。

また、現在の韓国の歴史教科書(「韓国の高校歴史教科書」明石書店、2006年)では、江戸時代、日本にやってきた朝鮮通信使が、「日本に色々のことを教えてやった」と書いていますが、ダレの理解ではどうみても朝鮮側からの日本への朝貢となっています。

また、この本(および「韓国の高校歴史教科書」)には元寇については何も書いていません。朝鮮の歴史には元寇はなかったようです。

 

1636年モンゴルが明を攻撃したとき、当初朝鮮は明に加担していたので、モンゴルが清を建国すると、朝鮮は清との間で従属的な条約を結ぶことになります。

毎年たくさんの金銀財宝を清に贈らなければなりませんでした。(もっとも、中国からの相当の贈り物もあったようです)

朝鮮はあえて貧しい国を演じ、中国からの要求を弱めるように、金銀の採掘を禁じ、貿易を禁じたと述べています。

もろもろのことについて書いていますが、基本的には、他の朝鮮関連書物と大差ありません。

次の章立てになっています。

第一章 朝鮮の自然地理
第二章 朝鮮の歴史ー中国、日本との関係
第三章 国王ー王族 その他
第四章 政府ー行政区や役人の階級等かなり詳しく書かれています
第五章 法廷ー監獄や刑罰の残虐な様子が書かれています
第六章 科挙
第七章 朝鮮語ー文法等が詳しく書かれています
第八章 社会身分ー両班、常民、奴婢の身分制度について
第九章 女性の社会的地位ー女性はいわば奴隷のようなものであった
第十章 家族ー子供は特に父親に絶対服従である
第十一章 宗教ー儒教、仏教、迷信の影響力
第十二章 科学ー産業、技術、商業が発達していない

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