韓国人による韓国論

これまで紹介した呉善花や金文学の他にも、韓国を直視しようとする韓国人による韓国論の本があります。

日本語に翻訳された本の多くは日本びいきですが、より正確に近現代の歴史を評価しなおそうとする本も少数ですが翻訳されています。

これまでご紹介しなかった次のような本を読みました。

朴泰赫 「醜い韓国人」(光文社、1993年)
鄭大均 「在日韓国人の終焉」(文芸春秋、2001年)
崔基高 「日韓併合の真実」(ビジネス社、2003年)
金完燮 「親日派のための弁明」(草思社、2002年)
朴一他 「『マンガ嫌韓流』のここがデタラメ」(コモンズ、2006)
李栄薫 「大韓民国の物語」(文芸春秋、2009年)

李朝の身分は大きく分けて、貴族(両班)、中人、常人(奴婢)の三つに分けられていて、日本統治以降この身分制度は廃止されたものの、精神的にはその後も残存していました。

朴泰赫は中人の出だと書いています。その他の人の出自はわかりませんが、韓国人による韓国論では、自分の出自によって歴史観が異なると思います。

両班出身の人々は、朝鮮を滅ぼし自分達の身分を奪った日帝は憎いのでしょうし、
下層の人々は日帝に対して一定の評価をすると思います。

朴泰赫「醜い韓国人」は、父親から聞いた朝鮮時代の特に常人の悲惨な生活、その後に訪れた日帝時代の様々な改革について、日韓併合を肯定的に評価しています。(ただしこの本は、日本人外交評論家・加瀬 英明との共著であるといわれている)

崔基高「日韓併合の真実」は、李朝末期、日清・日露戦争期に、韓国内で改革を志ざした人々の努力と挫折について忠実になぞっています。これも日韓併合を肯定的に評価しています。

金完燮「親日派のための弁明」も内容的には上と同じようなものですが、更に激しく韓国や中国を批判し、日本を肯定しています。

日本が西欧列強の他(アジア・アフリカ・南米の中で)ただ一国近代化ができたのは、江戸時代が封建社会であった点をあげています。実は私も漠然とそう思っていました。

封建社会とは、いわば株式会社の事業部制です。本社は徳川幕府であり、大名は事業(藩)部長です。本社と事業部は緊張感をもち、それぞれの内部の結束と産業の発展に尽力します。

それが藩それぞれと国全体に力をつけ人材を育て、国の一大事にあたって一致結束できたました。

他方専制君主制では、君主が巨大な力をもつ一方、君主に代わる力、中間管理職や民衆の意識が成長しておらず、国全体としての大きな力を発揮できなかったと主張しています。同感です。

鄭大均は、日本人を母親に持つ在日韓国人二世で、殆ど日本人と言ってもいい人ですが、この人は「もういい加減に在日とかいってないで、帰化して日本人になろうではないか」のような語り口です。

朴一他「『マンガ嫌韓流』のここがデタラメ」では、「マンガ嫌韓流」への反論です。複数の著者による共著です。多分全員日本人あるいは帰化人あるいは在日韓国人だと思います。少し読みましたが反論ですので、細かい議論はじっくり読まなければ、良否の判定ができません。

李栄薫は高名な韓国の経済史の教授のようで、従来の韓国の歴史教科書・歴史認識を歴史の歪曲として、韓国人としてのプライドをもって、冷静に様々な論文を引用して批判しています。

1979年~89年6冊からなる「解放前後史の認識」なる本が出版され、2002年から採用された高校の教科書はその記述の根拠をこの本によっています。

ここにある歪曲した歴史認識に危機感をもった金完燮は論文集「解放前後史の再認識」を編集し、更に「大韓民国の物語」では「再認識」に掲載された論文をもとに歴史教科書を批判しています。

すなわち、歴史教科書の思想は民族主義といわれるもので、韓民族の優秀性を謳ったり、民族を美化している。「いったい韓民族とは何か」との問いから初めて、これらの民族主義の無意味を指摘し、科学的歴史観を唱えます。

李朝の政治を批判する一方で、初代大統領・李承晩は韓国では評判が悪いが、彼でなければ大韓民国の統一と建設は不可能であったと、一定の評価をし、ここでも韓国史の通説・俗説を批判しています。

金完燮は韓国で迫害を受けているようですが、正しいと信じることを懸命に主張しているようです。

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