ヘンリー・S・ストークス「連合国戦勝史観の虚妄」

ヘンリー・S・ストークス[連合国戦勝史観の虚妄](2013、祥伝社新書)を読みました。

著者は、1938年英国生まれ。
61年オックスフォード大学修士課程終了後、ジャーナリストとして日本に赴任。
[ファイナンシャル・タイム][ニュウーヨーク・タイムス]紙の東京支局長を務めています。
三島由紀夫と最も親しかった外国人記者だそうです。

夫人は日本人、子息はタレントのようです。

滞日50年、賭け値なしの知日であり親日です。

内容は、完全な日本びいき、全ページ日本礼賛です。
彼はクエーカー教徒で、クエーカー教徒はキリスト教の中では迫害されているそうで、
クエーカー教徒にたいする理不尽な迫害を、ユダヤ人や日本人に重ねて見ているようです。

三島由紀夫と親しかったので、三島の記述が多いです。

三島が自衛隊市谷で、自衛隊員に向かって演説し、
割腹自殺したことをかなり詳しく書いていますが、
当時、私は建築の大学院の学生で、そのときの興奮した雰囲気を鮮明に覚えています。

その他、日本全般については、次のような章立てです。

第2章 日本だけが戦争犯罪国家なのか?
第4章 橋下市長の記者会見と慰安婦問題
第5章 蒋介石、毛沢東も否定した「南京大虐殺」
第7章 日本はアジアの光

第二次大戦が始まった当時、有色人種に対する人種差別は歴然で、
西欧による日本下ろしの機運が強くありました。

チャーチルの個人書簡では、同じイギリス人として、
聞くに堪えない数々の悪口が書かれているといいます。

「日本が東南アジアの諸国を侵略したのではない。
500年の亘る西欧の植民地支配を解放したのだ」というのが著者の主張です。

西欧はアジア・アフリカの国々を食い物にし、
被支配者に高等教育を受けさせることはなかったが、
日本はこれらの国を解放し教育した。

アジアの国々は、西欧の圧倒的な力の前に西欧からの独立を想像することもできなかったが、
マレーシアやシンガポールでの日本軍は衝撃的に強く、
瞬く間に英軍を追いやったことは、アジアの人々に強烈な勇気を与えた。

逆に、敗れた西欧は体面をつくろうためにも、
日本が野蛮で残忍だという、プロパガンダを展開しているが、
実際は、日本軍は規律正しく、西欧の主張は正当でない。

戦勝国が敗戦国を裁く東京裁判にも疑問をもちます。
彼が少年のとき読んだ[a Bar of Shadow]([影の獄にて](1982、思想社))に感銘を受け、
日本人を残虐として批判するのは公平ではないと思ったそうです。

この本は映画[戦状のメリークリスマス]の元本だそうです。
私は、この本もこの映画もみていません。
機会があったら本を読んでみたいと思います。

東京裁判の不当性を主張します。
「あの戦争で裁かれるべきは、戦勝国側だった」と。

この本では殆ど一次資料がありませんが、
南京大虐殺では、色々資料を示して、「南京大虐殺はなかった」といっています。

7章には、2012年著者が「日印国交60周年の集い」で講演した、内容が紹介されています。
この会合には、
日印の代表者のほかチベット、ウイグル、南モンゴル、台湾、北朝鮮の代表者も集まりました。

主旨は次のようなものです。

20世紀でもっとも驚く展開は、500年続いた植民地支配の呪いが終焉を迎えたことである。
それは第二次大戦で日本が、白人の植民地支配に痛烈は打撃を与えたからである。

19世紀後半日本は明治維新を成し遂げたとき、インドはイギリスに征服された。

インドの独立を戦い、後[偉大な指導者]と呼ばれたボースは、1943年来日し講演した。

自分が小学生だったころ、日本は日露戦争に勝利し、
インドでは多くの親達が、東郷元帥や乃木大将の写真を買ったり、
日本の製品を買って家に飾った。

日本はアジアの光だった。
このたび日本はイギリスに宣戦布告した、
これはインドにとって独立のための千載一遇のチャンスであり、日本に感謝している。

として、日本とともに自由インド仮政府(首班ボース)はイギリス、アメリカに宣戦布告する。

第一次世界大戦後のパリ講和会議で、国際連盟の設立にあたって、
有色人種ただ一人の日本は人種差別撤廃の提案をした。
11対5の多数の賛成を得たにもかかわらず、
アメリカ大統領ウィルソンは「全会一致」が必要と却下した。

インドネシアは350年間にわたり、オランダに侵略されていたが、
1942年日本のインドネシア進行により解放された。

「アジアの国々を侵略したのは西欧諸国であり、
日本は植民地を解放したのだ」というのが、著者の一貫した主張です。

 

自虐史観で育ってきた私(日本人)からすれば、
「そこまで同意していいものか」と躊躇します。

ともかく、この主張は戦前の日本の行動を最も善意に解釈したものだと思います。
これを全面的に受け入れていいものかどうか、
様々な視点からの検証が必要です。
可能か限り一次資料で勉強して、自分なりの考えをもちたいと思います。

既に数冊の本を買いました。

加瀬英明、ヘンリー・ストークス[なぜアメリカは対日戦争をしかけたか]ジェフリー・レコード[アメリカはいかにして日本を追い詰めたか]西尾幹二[国民の歴史]渡辺惣樹[日米衝突の根源]渡辺惣樹[日米衝突の萌芽]ピーター・ドウス[帝国という幻想]秦郁彦[慰安婦と戦場の性]他

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