ジョージ・アキタ他「日本の朝鮮統治を検証する」

朝鮮問題は卒業しようと思うのですが、気になる本を見つけると、ついつい読んでしまいます。

最近出版された、ジョージ・アキタ他著[日本の朝鮮統治を検証する 1910-19845](草思社)を読みました。

著者が米人と紹介されていたので購入したのですが、アキタ氏は、日系二世で「割り引かなければいけないか」という心境です。

 

私も含めてこれまで長い間、「日本は韓国や中国や東南アジアの国々にひどいことをしたのだ」、「日本民族は、『2度とこのようなことをしません』と謝罪するしかないのだ」、と考えてきました。

それぞれの国・民族の立場から歴史をみる方法論は民族史観といわれています。これまで日本人は自国の現代史を、日本人の立場からというより、アジアの国々の視点からみることを当然と考えてきましたが、「本当にそれが真実だろうか」とする修正主義の考えも強くなってきたと思います。

私見では、韓国が日本の朝鮮統治に対して、いつまでもしつこく、「世界で最も残虐な植民地支配政策だった」と批判し、「千年たっても恨み続ける」と声高に言い続けるにつけても、ただただ謝るのではなく、朝鮮統治のいいところ悪いところすべて掘り起こし、冷静に考えてみようという機運が強くなったと思います。

 

アキタ氏は修正主義の立場から、日本による朝鮮統治の功の部分に光を当てます。

論の展開は一次資料を使って論述するというよりも、当時の状況判断や、すでに一定の評価を受けていた論文からの引用が多くあります。

先ず、日本は明治時代は、すでのにオープンで法に従う国であったと「証明」します。司法は独立していたし、決して政治の自由にはなっていなかったといいます。

例として、ロシア・皇太子が来日し、日本の警官に刀で切りつけられ、危うく命を失いかけた大津事件を取り上げます。

このとき加害者をどのように処分するかで意見がわかれました。

一国の皇太子を傷つけ、戦争にもなりかねない事態に、死刑に処すべきという意見と、被害者は国家元首ではなくあくまでも皇太子であることから、国内法に従うべきだという意見が対立します。

結局国内法にのっとり、無期懲役の判決を下します。

また、朝鮮統治に最も重要な役割を果たした、山形有朋は漸進主義をとり、決して急進的に日本化を図ろうとしたのではないし、基本的に歴代の総督もこの方針を採っていたといいます。

欧米の植民地政策と日本のそれとの比較もしています。これはよく言われていることですが、
欧米は植民地からの搾取が主目的であったが、日本のそれは同化であった。

先にも書きましたが、既に発表された諸論文にあるときは反論し、あるときは同意しながら色々なことを論じていますが、どちらにしても、「韓国・朝鮮人の日本批判の多くは的を外している」、「圧制という意味では、西欧のそれとは比較にならない」といいます。

この本で記された内容は、目新しいものではありません。私はここに書かれていることに同意しますが、昔の話だし、「なるほど、そうだ」となかなか「実感」がもてません。

歴史というものはそういうものかも知れません。

 

昔、「観念論」について勉強しました。これは哲学の話です。

人間の経験はすべて観念にすぎない。

これまで見たり聞いたりしたことは、ただ長い間映画をみていたのであり、事実と断言する根拠はなにもない。

歴史を勉強しても、このような空虚さを持つのは、私だけなのでしょうか。

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